それでも私の人生を確実に変えた3冊の漫画

たぶん中学時代からビブリオマニア(蔵書狂)だったのでしょう。週3回ほど学習塾に行って高校受験の勉強をしていたはずですが、覚えているのは帰り際に駅前の本屋に寄って、なんやかんやと本を物色して、お小遣いの中からちょっとずつ本や漫画を買っていたこと。一番最初に買った小説はベニー松山の「隣合わせの灰と青春」だったような気がします。どういう基準だったのかわかりませんが、ファミコンゲーム絡み、その流れだったのかな。銀河英雄伝説、あとなぜかワーズワースやバイロンの詩集なんかを買っていました。参考書も買いましたが、親から参考書を買いなさいと言われて渡されていた図書券で吉田戦車の「戦え軍人くん」を買ったこともあります。かなり申し訳なく思いましたが、そうやって書い集めた本を本棚に並べるのが、また楽しいんですよね。

高校時代は受験勉強に疲れたら夜中の10時くらいから自転車に乗って出かけて、駅3つくらい向こうの大きな本屋(24時まで開いてる)に行って、本やらマンガやら、まあほとんど立ち読みでした。でも勉強を兼ねて徒然草や奥の細道の現代訳版とかを買ったり。

大学に入ってからも、教室よりも生協の本屋とその前のラウンジみたいなところの往復のほうが記憶に残っています。当時、なぜか急に思い立って購入した芥川龍之介全集は、ほとんど読まないまま実家の棚で眠っていることは秘密です。ですが村上春樹とは遅い出会いだったものの全作品を何度も読んで、昼間から公園でビールを飲む生活を真似るほどでした。ここに草野球のホームランボールがきれいな放物線を描いて飛んできたら、自分も小説が書けるようになるのかなあ、とかなんとか。

社会人になってからは変に財力があるものだからひどくなって、熟読、速読、積ん読ふくめて、毎月5万円分くらい、20~30冊くらいはIT系やらビジネス系やらなんやら、本を買っていたと思います。小説は全く読まなくなりました。でもAmazonとかよくないですよね~、10冊くらいまとめて買ったりとかしてたもんですから、部屋中えらいことになって、2~3回、大量に処分したりAmazonのマーケットプレイスで売りさばいたりしましたが、それでも実家に残っている本は数百どころなのかそれ以上なのか、よくわかりません。

前置きが長くなりましたが、そんな感じで良い本、そうでない本、印象に残る本、残らない本、それのどれでもない本など、様々な本との数々の出会いを経て、今では少々良い本に出会っても不感症気味、「この一冊が考え方を変えた!」とかいう雑誌の特集なんかも冷ややかで「本一冊で人生変わってたら人生なんぼあっても足らんわ!」くらいの悪態をついたりしているのですが、せやけど齢36歳にもなれば、この本と出会わなかったら今の人生ないな、という本もわずかながらあって、それがこの、マンガです。

小泉吉宏「ブッタとシッタカブッタ」1~3

  

この本との出会いは2年前、産業カウンセラー養成講座で知り合った方から教えてもらいました。直接は聞いていませんが、養成講座の指導者の一人もこのマンガをオススメしていたそうです。

「シッタカブッタ」というのが何かにつけてわかった気になっている(知ったかぶっている)ブタさんなんですが、「ブッタ」というブタさんの聖人さん(仏陀とかけている)から出てくるさらっとすごい一言に「えっ!?」と驚いたような、気づいたような、そんな表情を見せたりします。3冊に渡ってそんな感じで、まあ、いろいろなキャラが出てきて、わかったつもり側のキャラに「それってどうなの?」という投げかけがあります。そしていつしかシッタカブッタも自分との対話の中で様々な気付きを得るようになります。例えば、

「楽になることなんかどうでもいいやと思ったら楽になった」

当時、私にとっての最後の会社勤めをしていた時期で、随分と不自由な考え方をしていたのでしょう。何かにつけて息苦しいような状況が多々あり、それをなんとかしたいと思ってみても、なかなかうまくいかずにあがいているような、そんな時期でした。

その時にこの本に出会って、自分が小さいことに囚われていること、いま自分には見えていないことが実は大きくて広い世界であること、なんか文字にするとありふれた感じではありますが、そういう「感じ」を絵と文字から感じて身体に染み渡ったような、そんな感覚でした。

程なくして会社を辞めて、どうなるかわからんけど一人でやってくか、という決断をすることになります。その決断というかなんというか、決断というとオオゴトのようですが、それはそれはごく自然な流れでした、その流れを呼び込んだのは間違いなくこの漫画であったと思います。

そんな(私にとって)素晴らしい漫画ですが、よくブックオフで100円で売っているそうです。思うのですが、本の裏表紙にもどこにも書いていませんが、その人その人、それぞれにとっての賞味期限があるんだと思います。それより遅くてもいけない、それより早くてもいけない。今の皆さんにとって、この本が絶妙なタイミングでの出会いなのかどうかはわかりませんが、もしご興味があれば、300円で人生に変化を。

ということで。

解決志向ブリーフセラピー関連書籍

最近、学生支援の同僚のなかで解決志向ブリーフセラピーが密かに?流行っていて、勉強会に参加したり、本を回し読みしたり、とみんなで勉強をしています。

そういった時に紹介できるように、私が今まで読んだ解決志向ブリーフセラピー関連の書籍をまとめておきたいと思います。

森俊夫・黒沢幸子「<森・黒沢のワークショップで学ぶ>解決志向ブリーフセラピー」(2002年、ほんの森出版)

一番最初に読ん解決志向ブリーフセラピーの本です。解決志向ブリーフセラピーの著書を多数出しておられる森先生、黒沢先生のワークショップをそのまま文章に起こしたもので、両先生のジョークや悪ノリ、ツッコミなどもそのまま掲載されていて、初めて読んだときは「なんやこれは!」と驚いたものです。

しかし内容は解決志向ブリーフセラピーの基本的な考え方から一通りの手法、また全体をとおして解決志向のマインドにも触れられる、とても良い一冊です。解決志向ブリーフセラピーとはなんぞや?という方は、まずこちらから入られるといいでしょう。

読みやすくて全体像が把握できるようになっていますので、まず最初に読む本として素晴らしく、また一通り読んだあとで復習として読み返す本としても良いかと思います。

森俊夫「先生のためのやさしいブリーフセラピー」(2000年、ほんの森出版)

次に読んだのがこれ。出版されたのはこっちのほうが古いようです。「月刊学校教育相談」という専門誌があるそうでして、そちらに掲載された森先生の連載、その後半部分だそうです。(前半部分は別の本になっています)

「先生のための」とありますように、学校の先生やスクールカウンセラー向けのブリーフセラピーの本という位置づけではありますが、学生支援のキャリアカウンセリング、もっと年齢層が上の場合でも十分、参考になるかと思います。実際、学校の先生を相手にロープレしている事例も紹介されています。

本書の注目は特に後半部分、ロープレの逐語記録の随所に森先生の解説が加わっている点です。ブリーフセラピストはこんなふうに考えながらやってるんや・・・と目からウロコでした。

森俊夫「“問題行動の意味”にこだわるより“解決志向”で行こう」(2001年、ほんの森出版)

前述の「月刊学校教育相談」での連載の前半部分がこのブックレットだそうです。「先生のためのやさしいブリーフセラピー」が事例も交えた具体的な内容になっているのに対して、こちらはやや原則論的な内容です。

私なりに解釈すれば、解決志向ブリーフセラピーが解決志向ブリーフセラピーたるゆえんは、ミラクルクエスチョンとかスケーリングクエスチョンとかコンプリメントとか、まあそれも大事には違いなんですが、それよりもその手法が使われる意図、マインドの部分にあるのだと思います。この本を読んで、解決志向ブリーフセラピーのマインド、ブリーフセラピストの在り方、解決志向とは何か、ということが腑に落ちた気がしました。

薄いブックレットなので、すぐに読めるのでこちらもオススメです。CDA(キャリア・デベロップメント・アドバイザー)の研修で「ソリューション・フォーカス」(解決志向ブリーフセラピーとほぼ同義)のコースがあり、そこで講師を務めていらっしゃった方からご紹介いただきました。

黒沢幸子「指導援助に役立つスクールカウンセリング・ワークブック」(2002年、金子書房)

まだ全部読んでいないのですが、スクールカウンセラー、学校の先生向けの解決志向ブリーフセラピーのワークブックです。質問形式で、こんなときにどう答えるか? というワークで構成されています。

大学生の就職支援をしているときに、カウンセラーとして話を聞く部分と、一人の社会人としての情報提供や私の主観が入ったコメントをする部分とのバランスに悩んだ時期があって、学校教育の場合はどうなんかなあ、と思ってちょうど見つけたのでした。学校でのカウンセリングでは、話を聞く部分と指導する部分(訓育的指導)がそれぞれ必要といった感じで書かれていて、なるほど、と思ったものでした。

黒沢幸子「未来・解決志向のブリーフセラピー タイムマシン心理療法」(2008年、日本評論社)

いくつか基本的な本を読んで基礎がわかったところで、という前提付きですが、この本は本当にオススメです。読んでいて4~5回は泣きました。

解決志向ブリーフセラピーのミラクルクエスチョンを少しアレンジして日本の現場で受け入れられやすいようにしたタイムマシンクエスチョンというものがあって、その手法を軸に事例紹介をしつつ、解決志向ブリーフセラピーがどのようにクライエントに関わっていくか、を描いた一冊です。ひとつひとつの事例の中で、クライエントが成長していく姿がとても感動的で、そんな成長に立ち会えるカウンセラーになれたら幸せだなあ、と素直に思えた本でした。

ブリーフセラピストかどうかを超えて、カウンセラーとしての在り方を感じる上でも、とても影響を受けた本です。

青木安輝「解決志向(ソリューションフォーカス)の実践マネジメント」(2006年、河出書房新社)

こちらはソリューション・フォーカスとなっていますが、内容は解決志向ブリーフセラピーと同じです。青木さんという方は、解決志向ブリーフセラピーをビジネス向けに紹介し、ご自身もソリューション・コンサルタントとしてご活躍されている方です。

全体を網羅した本ですが、森先生の著書に比べるとやや固い(というか森先生の本がやわらかすぎる?)かな、という印象です。

ビジネスの現場、日頃の上司・部下関係などで解決志向ブリーフセラピーを活かしたい場合などは、こういった切り口の本のほうが良いかもしれません。

橋本文隆「問題解決力を高めるソリューション・フォーカス入門」(2008年、PHP研究所)

こちらも青木さんの本と同様、ややビジネス向けな印象の本です。絶版になっていて、中古で購入しました。

ざっと、私が読んだ本(一部は流し読み程度)はこのあたりです。インスー・キム・バーグの本とか、原著にも当たってみようと思って、そちらはまだ読んでいませんが、まず最初に読まれるとしたら上記のいずれか、オススメとしては、

  1. 森俊夫・黒沢幸子「<森・黒沢のワークショップで学ぶ>解決志向ブリーフセラピー」
  2. 森俊夫「“問題行動の意味”にこだわるより“解決志向”で行こう」
  3. 黒沢幸子「未来・解決志向のブリーフセラピー タイムマシン心理療法」

こんな順番で3冊ってところでどうでしょうか。